年下上司との関係に悩む60代の方へ
新しい職場で働き始めて、自分よりずっと若い社員から仕事の指示を受ける。

頭では分かっている。分かってはいるんだけど…
ふと、そんな気持ちになることはありませんか。
目の前で指示を出しているのは、自分の子ども、あるいは孫のような世代。これまで何十年ものキャリアを積み上げてきたあなたに向かって、彼らが業務の進め方を説明しています。「ここは新しい職場だから」「立場が違うのだから」と理解しているのに、心のどこかがモヤモヤする。
多くの方が、同じようなモヤモヤを抱えていらっしゃいます。
そのモヤモヤを感じること自体は、決しておかしなことではありません。むしろ、それはあなたがこれまで真剣に、誠実に仕事と向き合ってきた証拠です。
この記事では、そんな「心のモヤモヤ」を整理しながら、年下の上司や指導役との人間関係をより良くするヒントをお伝えしていきます。



お互いが気持ちよく働く方法を、一緒に考えましょう。
まず知っておきたい心の持ち方。年下からの指導は「過去の否定」ではありません
新しい職場で年下の社員から指導を受けるとき、ふと胸がざわつくことがあるかもしれません。
- 「自分のやってきたことが否定されているのではないか」
- 「長年の経験なんて意味がないと言われているようだ」
でも、少し立ち止まって考えてみてください。
彼らがあなたに伝えようとしているのは、「この職場での今のやり方」です。どの会社にも、その会社なりのルールや手順、独自の文化があります。年下の上司や指導役は、あなたのこれまでのキャリアを否定しているわけではありません。ただ、「うちではこういうふうにやっています」ということを、一生懸命に伝えようとしているだけなのです。
指導する側の若手社員が緊張していることも多々あります。人生の先輩を前にして、「失礼にならないだろうか」「ちゃんと伝わるだろうか」と内心ドキドキしていることも少なくありません。
正社員・再雇用として同じ会社で働いていても同じ
正社員として、あるいは再雇用で同じ会社に残られている方も、こんなふうに考えてみてはいかがでしょうか。
会社があなたに期待しているのは、若手社員と「競う」ことではありません。長年培ってきた経験や知識で、組織を「支える」ことです。最前線で数字を追いかける役割から、チーム全体を見守り、いざというときに力を貸す役割へ。それは「格下げ」ではなく、「役割の変化」です。
野球で例えるなら、4番バッターから、ベンチでチームを支えるベテラン選手になるようなもの。試合に出る回数は減っても、その存在感と経験は、チーム全体の安心につながっています。
あなたの経験は、この先ずっと、若い世代を支える大きな財産になります。
年下上司・若手との人間関係がうまくいく「大人のコミュニケーション術」
年下の上司や指導役との関係を良くするために、特別なテクニックが必要なわけではありません。
大切なのは、こちらから少しだけ歩み寄ること。それだけで、職場の空気は驚くほど変わります。
ここでは、明日からすぐに使える「大人のコミュニケーション術」を2つご紹介します。
1.「教えてください」の魔法。素直に聞ける人が信頼される
「教えてください」
この一言には、不思議な力があります。
長く働いてきた方の中には、「年下に頭を下げるのは…」と抵抗を感じる方もいらっしゃるかもしれません。でも、「教えてください」という言葉は、決して自分を下げる言葉ではありません。むしろ、「あなたを信頼しています」「あなたの話をきちんと聞きますよ」というメッセージなのです。
この一言があるだけで、相手の緊張は和らぎます。「この人は話を聞いてくれる人だ」と思ってもらえれば、そこから信頼関係が生まれていきます。
具体的な会話例を見てみましょう。
場面:新しいシステムの操作方法を説明されたとき
❌ 避けたい対応: 「ああ、なんとなく分かりますよ」(本当は分かっていないのに、聞くのが恥ずかしくてつい言ってしまう)
⭕ おすすめの対応: 「すみません、もう一度ゆっくり教えていただけますか。メモを取りながら聞きたいので」
場面:会議の進め方が以前の職場と違うとき
❌ 避けたい対応: 「以前はこういうやり方じゃなかったので…」(無意識に否定的に聞こえてしまう)
⭕ おすすめの対応: 「このやり方は初めてなので、流れを教えていただけると助かります」
場面:分からない専門用語が出てきたとき
❌ 避けたい対応: 黙ってやり過ごす
⭕ おすすめの対応: 「恥ずかしながら、その言葉は初めて聞きました。どういう意味でしょうか?」
「教えてください」と素直に言える人は、周囲から見て「話しやすい人」「一緒に働きやすい人」と映ります。
それは、年齢を重ねたからこそできる、大人の余裕ある振る舞いです。
2.「ありがとう」を言葉にする。感謝が職場の人間関係を変える
感謝の気持ちは、思っているだけでは伝わりません。短くてもいいので、言葉にして伝えることが大切です。
こんな場面で、一言添えてみてください。
場面:若手社員が何かを教えてくれたあと
⭕ 「分かりやすかったです。ありがとうございます」
⭕ 「おかげで助かりました。ありがとう」
場面:忙しそうな若手が時間を割いてくれたとき
⭕ 「お忙しいのに、すみませんね。ありがとうございます」
場面:ちょっとしたフォローをしてもらったとき
⭕ 「気づいてくれたんですね。ありがとう」
「ありがとう」は、立場や年齢を超えて、人の心を開く鍵になります。言われた側は「この人のためにまた何かしてあげたい」と自然に思うものです。
たった一言ですが、この積み重ねが、職場での信頼関係を育てていきます。



ありがとうは魔法の言葉ですね!
職場でよくある場面。こんな時、どう振る舞う?【ケース別・伝え方のコツ】
ここでは、実際の職場で起こりそうな場面を想定して、具体的な対応方法をご紹介します。
ケースA 年下上司の方針に不安を感じたとき
長年の経験から、「この進め方だと、後で問題が起きるのでは…」と感じることがあるかもしれません。そんなとき、どう伝えればいいでしょうか。
ポイントは、「否定」ではなく「相談」のスタンスで話すことです。
場面:新しいプロジェクトの進め方に、リスクを感じたとき
❌ 避けたい言い方: 「それだと絶対うまくいかないと思いますよ。昔、同じようなことがあって失敗したことがあるんです」
→ いきなり「絶対うまくいかない」と言われると、相手は自分の案を否定されたと感じてしまいます。
⭕ おすすめの言い方: 「一つ確認させていただいてもいいですか。以前、似たようなケースで〇〇という問題が起きたことがあったんです。今回はその点、どう対応される予定でしょうか?」
→ 「確認」「質問」の形で伝えることで、相手も防御的にならずに受け止められます。
場面:明らかにリスクがある判断が下されそうなとき
❌ 避けたい言い方: 「それは違うと思います」
⭕ おすすめの言い方: 「過去の似たようなケースからすると、〇〇というリスクが考えられるのですが、念のため上に確認されてみてはいかがでしょうか。私の見方が古いかもしれませんが、少し心配になりまして」
→ 「私の見方が古いかもしれないが」と添えることで、押しつけがましさがなくなります。また、「上に確認を」と提案することで、若手が一人で責任を負わずに済むようにサポートする姿勢が伝わります。
このように「相談」のスタンスで話すと、若手も「この人は敵ではない」「一緒に考えてくれている」と感じてくれます。結果として、あなたの意見が受け入れられやすくなるのです。
ケースB 指示されたやり方が非効率だと感じたとき
「もっと効率の良いやり方があるのに…」と思ったときの伝え方も見ていきましょう。
最初からやり方を変えようとするのは、少し待ってみてください。
まずは「指示通りにやる」ことも大切です。
職場には、あなたが知らない事情やルールがあるかもしれません。一見非効率に見えるやり方にも、何か理由がある場合があります。まずは指示通りにやってみることで、「この人は素直に対応してくれる」という信頼を得ることができます。
場面:書類の整理方法が非効率だと感じたとき
❌ 避けたい対応(入社初日~数週間): 「こうした方が早いと思いますよ」といきなり提案する
⭕ おすすめの対応: まずは1~2ヶ月、指示通りのやり方で業務をこなす。その間に、なぜこのやり方なのか、背景を観察する。
信頼を得てから、「提案」として伝える
しばらく働いて、「この人はきちんとやってくれる」という信頼が生まれたら、そこで初めて改善案を伝えてみましょう。
⭕ おすすめの言い方: 「いつもこのやり方でやらせていただいていますが、もし可能であれば、〇〇という方法も試してみていいでしょうか?ダメだったら元に戻しますので」
→ 「試してみていいですか」「ダメだったら戻します」という言い方をすることで、押しつけではなく、あくまで「提案」であることが伝わります。
もし提案が却下されたら
「今のやり方でお願いします」と言われたら、素直に「分かりました」と受け入れましょう。その場で反論せず、にっこり笑って従える人は、職場で「大人だな」と一目置かれる存在になります。



まずは焦らず、信頼が大事ということですね。
職場で愛されるベテラン「相談したくなる存在」とは。


ここまで、年下の上司や指導役との人間関係を良くするヒントをお伝えしてきました。最後にお伝えしたいのは、あなたが職場で「本当に求められていること」についてです。
それは、若手社員よりも速く仕事ができることでも、誰よりも知識が豊富であることでもありません。
大切なのは、「穏やかな気持ちで働いていること」です。
「落ち着いた存在感」が職場の人間関係を変える
少し意外に感じるかもしれませんが、職場において「いつも落ち着いて、前向きに働いている人」の存在は、それだけで大きな価値があります。
若い社員は、日々さまざまなプレッシャーの中で仕事をしています。上からの指示、締め切り、人間関係のストレス…。そんなとき、職場にいつも穏やかで、どっしり構えているベテランがいると、それだけで空気が和らぎます。
「あの人がいると、なんだか安心する」そう思ってもらえたら、あなたはすでに職場に欠かせない存在です。
「困った時に相談したくなる人」になる
知識や技術で若手を圧倒する必要はありません。目指すべきは、「困った時に相談したくなる人」です。
相談したくなる人には、共通する特徴があります。
- 話しかけやすい雰囲気がある
- 否定せずに、まず話を聞いてくれる
- 自分の経験を押しつけない
- 「一緒に考えようか」と言ってくれる
具体的な対応例を見てみましょう。
場面:若手社員がミスをして落ち込んでいるとき
❌ 避けたい対応: 「だから言ったじゃないか」「私の言う通りにしていれば…」
⭕ おすすめの対応: 「大丈夫、リカバリーできるよ。私も昔、似たようなことがあってね…。一緒に考えようか」
場面:若手社員がこっそり仕事の悩みを打ち明けてきたとき
❌ 避けたい対応: 「それくらい当たり前だよ」「私の時代はもっと大変だった」
⭕ おすすめの対応: 「そうか、それは大変だったね。話してくれてありがとう。何か手伝えることがあったら言ってね」
こうした対応ができる人は、自然と周囲から「頼れるベテラン」として慕われていきます。それは、仕事のスキルとは別の、人としての魅力です。
経験を活かす新しいポジション
60代、70代が求められるポジションは、「若手のライバル」ではなく、「若手の味方」です。
- 困った時に相談できる人。
- 失敗しても責めずに見守ってくれる人。
- 話を否定せずに聞いてくれる人。
そんな存在が職場にいると、若手社員は安心して挑戦できるようになります。
まとめ
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
年下の上司や指導役との関係に戸惑いを感じること、モヤモヤすること、それは決しておかしなことではありません。長年、真剣に仕事に向き合ってきたあなただからこそ感じる、自然な気持ちです。
でも、その大切にしてきた価値観は、相手との間に壁を作るためのものではありません。
「教えてください」と素直に言えること。「ありがとう」を言葉にできること。相手を否定せず、まず話を聞けること。
これらはすべて、長い人生経験を積んできたあなただからこそできる、大人の振る舞いです。
豊かな経験と、大人の余裕。その二つを武器に、若い世代をそっとサポートする。そんな「頼れるベテラン」として、新しい職場で輝いてください。



あなたの長年の経験は、これからも誰かの力になります。










