60代の「仕事と介護の両立」、辞める前に考えるべき『転職』という選択肢

目次

転職したい気持ちはあるのに、なぜ動き出せないのでしょうか?

転職も考えたけれど、現実的には難しいよね…

介護と仕事の板挟みで苦しんでいる多くの60代の方が、心の奥でこんな風に感じているのではないでしょうか。転職という選択肢は十分理解している。でも実際に行動に移すとなると、様々な不安や障壁が立ちはだかる。

  • 「60代で雇ってくれるところなんてあるの?」
  • 「面接で介護の話をしたら不利になるんじゃないか?」
  • 「今の収入より下がったらどうしよう」
  • 「新しい環境に馴染めるだろうか」…。

こうした不安を感じるのは当然のことです。

でも、実は多くの方が感じているほど60代からの転職は不可能なことではありません。

実際、介護との両立を理由に転職を成功させ、「なぜもっと早く動かなかったんだろう」と話される方もいらっしゃいます。

この記事では、そんな「動き出せない理由」に対して、具体的な解決策をお示しします。

アクティブくん

あなたの一歩を後押しできれば幸いです。

なぜ60代の介護と仕事の両立は難しいのか?直面する現実の壁

介護と仕事の両立が困難に感じられるのは、決してあなたの努力が足りないからではありません。60代特有の現実的な壁が存在します。

介護と仕事の両立を難しくする壁
  • 体力的な壁
    平日の仕事に加え、夜間や早朝の介護で睡眠不足が続く毎日。20代、30代の頃とは違い、疲労の回復に時間がかかるようになったと感じる方も多いでしょう。
  • 時間的な壁
    介護は予測不可能なことがたくさん起こり得ます。急な体調変化、医療機関への付き添い、介護サービスの調整など、突発的な対応が求められます。しかし、従来の働き方では、そうした柔軟な対応が困難な場合が多いのが現実です。
  • 精神的な壁
    「会社に迷惑をかけている」「親のことを優先すべきか、仕事を優先すべきか」という葛藤は、想像以上に心を疲弊させます。特に責任感の強い方ほど、この板挟み状態に苦しまれているのではないでしょうか。
  • 職場環境の壁
    介護への理解が不足している職場、硬直的な勤務体系、カバーし合える体制の不備など、構造的な問題も両立を困難にしています。

これらの壁は確かに高いものです。だからこそ、環境を変える「転職」という選択肢が、突破口となる可能性があります。

とはいえ、「転職」の前に「今の職場の環境を変える」という選択肢もあります。

ここからは、今の職場のまま介護との両立を目指す方法と、転職して新しい環境にうつる方法の2つの選択肢について解説していきます。

【選択肢①】今の職場で両立を目指す使える制度と交渉のポイント

転職を検討する前に、まずは現在の職場で両立の可能性を探ってみましょう。思いがけず利用できる制度があるかもしれません。

会社の制度をフル活用する
  • 介護休業制度
    法律で定められた介護休業制度では、要介護状態の対象家族1人につき通算93日間まで休業できます。分割して3回まで取得可能なので、親の状態変化に応じて柔軟に活用できます。
  • 介護休暇制度
    年次有給休暇とは別に、年5日間(対象家族が2人以上なら10日間)の介護休暇を取得できます。半日単位での取得も可能なため、通院付き添いなどに便利です。
  • 時短勤務制度
    法定の制度では、介護のために1日の労働時間を短縮できます。フレックスタイム制度がある職場なら、より柔軟な時間調整が可能です。
  • 在宅勤務・テレワーク制度
    コロナ禍で多くの企業に導入されたテレワーク制度は、介護との両立に大きな効果があります。通勤時間の短縮により、介護に充てられる時間が格段に増えます。
職場への相談・交渉術
  • タイミングと相手を選ぶ
    いきなり「辞めたい」と相談するのではなく、「長く働き続けたい」という意思を明確に伝えながら、具体的な支援策を相談しましょう。直属の上司だけでなく、人事部への相談も効果的です。
  • 具体的な提案を準備する
    「何とかしてください」ではなく、「週2日の在宅勤務ができれば継続できます」「午後3時までの勤務にできれば」など、具体的な解決策を提案します。
  • 業務の引き継ぎ・分担案も併せて提示
    あなたが抜ける時間の業務をどうカバーするか、代替案も一緒に提案することで、会社側の理解を得やすくなります。

職場の体制や文化によっては、調整が難しい場合もあります。そんな時こそ、新しい環境への転職を前向きに検討するタイミングと言えます。

【選択肢②】転職への「心理的な壁」を乗り越える

転職が有効な解決策だとわかっていても、実際に行動に移すのは簡単ではありません。60代という年齢、介護という制約、そして新しい環境への不安…。これらの「心理的な壁」を一つひとつ乗り越えていく方法をお伝えします。

まずは「完璧な転職」を目指さない

「理想の職場」より「今より少しだけでも良い職場」を目指す

「給与も現状維持で、通勤時間も短く、介護にも理解がある完璧な職場」を探していては、いつまでも動き出せません。まずは「今の状況より少しでも改善される職場」を目標にしましょう。

「正社員でなければ意味がない」という固定観念を捨てる

パートタイム、契約社員、派遣社員での働き方が、正社員に劣るということはありません。大事なのは自分に合っているかどうかです。雇用形態より「働きやすさ」を優先する柔軟さが成功の鍵です。

「60代だから無理」と思い込まない

実は需要がある60代の人材

人手不足の現在、経験豊富で責任感のある60代は多くの職場で求められています。特に以下の分野では積極的な採用が行われています

  • 接客・販売(百貨店、スーパー、コンビニなど)
  • 事務・受付(医療機関、不動産会社など)
  • 軽作業・清掃(工場、オフィスビルなど)
  • 専門職活用(経理、講師、相談員など)

「落ちて当然」の心構えで挑戦回数を増やす

需要があるとは言え、60代の転職は若い世代より困難ではあります。しかし「何社か応募すれば1社は反応がある」と割り切れば、精神的負担も軽くなります。不採用になったとしても個人的な否定と受け取らず、「相性やタイミングが悪かった」程度に考えましょう。

「介護のことを言ったら不利になる」という「不安」

介護を隠すリスクは大きい

面接で介護のことを隠し、入社後に発覚した場合の方が問題になります。むしろ最初から正直に話し、理解のある職場を選ぶ方が長期的に働けます。

介護を「責任感の証明」として伝える

「家族の介護をしながらも働き続けたい」という姿勢は、責任感や継続力の証明になります。「大変な状況でも責任を果たそうとする人」という好印象を与えることもあります。

具体的な制約条件を明確に伝える

「月2回程度、平日に病院付き添いで半日休暇をいただくことがあります」など、具体的な条件を伝えることで、企業側も判断しやすくなります。

行動を起こすためにまずは小さなことから

情報収集から始める

いきなり履歴書を書いたり面接を受けたりする必要はありません。まずは求人情報を眺めるだけでも十分です。「こんな求人があるんだ」という発見から始めましょう。

1週間に1社だけ応募してみる

毎日転職活動をする必要はありません。週1社のペースでも、3ヶ月続ければ12社に応募できます。無理をせず、継続することを重視しましょう。

「練習のつもり」で面接を受ける

最初の数社は「練習」だと思って面接を受けてみましょう。緊張もほぐれ、自分の伝え方も上達していきます。

決して、転職は簡単!とは言えません。しかし、不可能なことでもないのです。重要なのは、小さな一歩からでも動き始めることです。

どんな仕事・職場が狙い目?介護と両立しやすい求人の特徴と探し方

転職活動を成功させるためには、闇雲に応募するのではなく、戦略的に求人を選ぶことが重要です。

(1) 働きやすい職場の「見極めポイント」

勤務形態の柔軟性
  • 短時間勤務: 1日4〜6時間程度の勤務で、時間帯がある程度選べる
  • 週数日勤務: 週2〜3日勤務で、曜日固定または選択可能
  • 在宅勤務: 完全在宅または出社との併用可能
  • フレックスタイム: 始業・終業時刻を調整可能
立地条件
  • 通勤時間: 自宅から30分以内が理想的
  • 交通手段: 電車だけでなく、バスや車通勤の可否
  • 介護施設との距離: 親の居住地域や利用施設からのアクセス
業務内容の特徴
  • 属人性の低さ: 個人に依存せずチームで対応できる業務体系
  • 緊急対応の頻度: 突発的な対応が少ない業務
  • 在宅勤務の可能性: リモートワークで対応できる業務内容

制度があるだけでなく、実際に利用している社員がいるかどうかも判断材料になります。

もちろん、すべてを満たす職場は滅多に見つかるものではありませんが、上記のポイントについて一度確認してみましょう。

(2) 自分に合った求人の「探し方のコツ」

効果的な検索キーワード
  • 勤務条件系
    「短時間勤務」「週3日」「週4日」「時短」「パート」「在宅勤務」「リモートワーク」
  • 年齢・経験系
    「60代活躍中」「シニア歓迎」「経験者優遇」「ブランクOK」
  • 介護関連
    「介護と両立」「家庭と両立」「柔軟な働き方」
  • 業界特化
    「事務」「販売」「コンサルティング」「講師」など、あなたの経験分野

求人サイト活用のコツ

大手求人サイトだけでなく、シニア向け求人に特化したサイトも活用しましょう。また、地域密着型の求人情報誌にも、大手サイトにはない隠れた求人が掲載されています。

人材紹介サービスの活用メリット

キャリアアドバイザーに介護との両立希望を明確に伝えることで、一般公開されていない非公開求人の紹介を受けられる可能性があります。また、企業との条件交渉も代行してくれるため、働き方について相談しやすくなります。

ハローワークの活用

ハローワークには地元企業の求人が多く集まります。また、60代の転職に詳しい相談員もいるため、具体的なアドバイスを受けられます。

面接で確認すべき重要なポイント

面接は企業があなたを見る場でもあり、あなたが企業を見る場でもあります。働きやすさに関わる重要なポイントを確認しましょう。マイナス印象を与えないためには、「長期的に安定して働きたい」「責任をもって業務に取り組みたい」という前提を伝えたうえで質問をすることです。

介護への理解度を探る質問例
  • 「家族の介護で急に休むことがあるかもしれません。そのような場合のフォロー体制はありますか?」
  • 「同じような境遇の社員の方はいらっしゃいますか?どのように両立されていますか?」
  • 「介護休暇制度を利用されている方は過去にいらっしゃいますか?」
柔軟な働き方の実態確認
  • 「在宅勤務制度を実際に利用している社員さんはどの程度いらっしゃいますか?」
  • 「勤務時間や勤務日数について、もしよければ個別の相談は可能でしょうか?」

転職活動を続ける心構え

「情報収集も立派な転職活動」

実際に応募しなくても、求人情報を見る、企業のホームページを調べる、転職フェアに参加するだけでも一歩前進です。

小さな成功を積み重ねる

書類選考を通過した、面接で話を聞いてもらえた、といった小さな成功も評価しましょう。それらの積み重ねが最終的な採用につながります。

自分自身を守るために。長く働き続けるためのセルフケアと心構え

介護と仕事の両立は長期戦です。一時的な頑張りだけでは乗り切れません。無理のないペースを見つけ、自分自身を守りながら続けていくことが重要です。

完璧を目指さない勇気

60点主義のススメ

介護も仕事も100点を目指そうとすると、必ず疲弊します。特に責任感の強い方は、「無理のない範囲で及第点をクリアできれば十分」と考え、完璧を目指すプレッシャーから自分を解放しましょう。

周囲への感謝と理解し合う姿勢

時には同僚や上司に迷惑をかけることもあるでしょう。しかし、過度な罪悪感は禁物です。誰もがそれぞれ事情を抱えて働いています。「お互い様」の精神で、困ったときには素直に感謝の気持ちを伝え、必要以上に自分を責めすぎず、周囲とのバランスを保ちながら働きましょう。

自分だけの時間の確保

小さな息抜きの習慣化

毎日15分だけでも、自分だけの時間を作りましょう。コーヒーを飲みながら音楽を聴く、お風呂でリラックスする、好きな本を読む。小さな積み重ねが心の健康を支えてくれます。

オフの日も作る

介護サービスを利用して、定期的に完全に介護から離れる日を作りましょう。映画を観る、友人と会う、趣味に没頭するなど、自分らしい時間を過ごすことで心身をリフレッシュできます。

健康管理の徹底

定期健康診断の受診

介護に集中するあまり、自分の健康を後回しにしてしまう方が多いのですが、あなたが倒れてしまったら元も子もありません。定期健康診断は必ず受診し、異常があれば早めに治療しましょう。

適度な運動習慣

最低でも週2〜3回、30分程度の散歩やストレッチを習慣化しましょう。体力維持だけでなく、ストレス解消効果も期待できます。

相談相手・支援ネットワークの構築

家族会・介護者の会への参加

同じ境遇の方々との情報交換や、他愛もない話、悩みを共有し合うなどのコミュニケーションは、想像以上に心の支えになります。地域の介護家族の会や介護者の会に参加してみましょう。

専門家との定期的な相談

ケアマネジャー、地域包括支援センターの相談員、場合によってはカウンセラーなど、専門家との定期的な相談体制を築いておくと安心です。

信頼できる友人・知人との関係維持

介護に忙しくなると、どうしても人間関係が狭くなりがちです。しかし、気軽に相談できる友人・知人との関係は大切な財産です。直接はなかなか会えなくても定期的に連絡を取り、関係を維持しておくと良いでしょう。

相談相手・支援ネットワークの構築は、長期的に介護と仕事を両立し、あなた自身の人生を大切にするために必要不可欠な「投資」でもあります。

まとめ

ここまでお読みいただいた方の中には、「転職が良いのはわかったけれど、やっぱり不安」と感じている方もいらっしゃると思います。 そうした不安を感じるのは、ごく自然なことだと思います。

しかし、小さな一歩が未来の自分を大切にすることにつながるのです。

  • 求人サイトで「60代歓迎」「短時間勤務」で検索してみる
  • 地域のハローワークに相談の予約を入れる
  • 履歴書を久しぶりに書き直してみる
  • 介護サービスの利用拡大について、ケアマネジャーに相談する

30分程度あれば一歩を踏み出せます。

「親の状態が安定したら」「もう少し介護サービスが整ったら」「もう少し貯金ができたら」…。など、すべての条件が揃うのを待つよりも、できることから少しずつ行動してみることで、道が開けることもあります。

介護と仕事の両立は、確かに簡単ではありません。

「辞めるしかない」と思い込んでいた状況から、「環境を変えれば続けられるかもしれない」という希望に変わることで、選択肢は格段に広がります。

あなたの経験、知識、そして家族を大切にする姿勢は、きっと新しい職場でも必要とされるはずです。完璧を求めず、小さな改善から始める。それが、未来への第一歩です。

今日、この記事を読んだことが、あなたの新しいスタートにつながれば幸いです。

アクティブくん

仕事も介護も、そして何よりあなた自身の人生も大切にできる道を、ぜひ見つけてください。

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この記事を書いた人

アクティブ100の看板キャラ。人生100年時代。アクティブシニアのための充実したライフスタイルやお仕事に関してお役に立てる情報を日々研究している。最近の趣味は相撲観戦。

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