「若手の考えがわからない」「ベテランが孤立している…」あなたの職場、世代間の壁はありませんか?
- 「最近の若い子は何を考えているのかわからない…」
- 「ベテランの方に新しいツールを使ってもらうのが大変で…」
そんな声がよく聞かれます。
現代の職場では、Z世代(※)から60代のベテランやシニア世代まで、実に幅広い世代が一緒に働いています。
でも、それぞれが持つ価値観や働き方の違いが、時として「見えない壁」を作り出してしまうことも。
本来なら、多様な世代が持つ経験や視点の違いこそが、会社の大きな「強み」になるはずなのに、うまく活かしきれていない企業も多いのではないでしょうか。
この記事では、世代間のすれ違いを解消し、全ての社員がいきいきと働ける「多世代共生」な職場をつくるための、具体的で実践的なコツをお伝えします。

明日からでもすぐに始められる方法ばかりなので、ぜひ参考にしてくださいね。
※Z世代:2000年代前後に生まれ、デジタルやSNSが当たり前の環境で育った若い世代
なぜ「多世代共生」な職場づくりが重要なのか?その背景と大きなメリット
時代の流れが求める多世代共生
まず、なぜ今「多世代共生」が注目されているのでしょうか。背景には、少子高齢化による働き手不足、70歳までの就業機会確保の努力義務化、そして働き方の多様化があります。つまり、様々な世代の力を借りなければ、企業の成長が難しい時代になっているのが大きな要因です。
多世代共生がもたらす4つの大きなメリット
- イノベーション(革新)の創出 異なる世代の視点が交わると、思いもよらないアイデアが生まれます。若手の柔軟な発想と、ベテランの豊富な経験が組み合わさることで、今までにない商品やサービスが生まれる可能性が高まります。
- 人材の定着と採用力強化 「どの世代も大切にされている」と感じられる職場は、社員の満足度が高く、離職率も低くなります。また、そうした職場の評判は外にも伝わり、優秀な人材が「ここで働きたい」と思ってくれるようになります。
- 技術・ノウハウの円滑な継承 世代間のコミュニケーションが活発になると、ベテラン社員が長年培ってきた貴重な知識や技術が、自然と若手に受け継がれていきます。これは企業にとって何物にも代えがたい財産です。
- 組織のレジリエンス(変化対応力)向上 多様な価値観を持つメンバーがいる組織は、急な環境変化にも柔軟に対応できます。一つの考え方に偏らず、様々な角度から問題を捉えられるからです。
すれ違いはなぜ起こる?「世代間の価値観」の違いを理解する
世代間のすれ違いを解消するには、まず「なぜ違いが生まれるのか」を理解することが大切です。それぞれの世代が育った時代背景を知ることで、「なるほど、だからそう考えるのか」と納得できるようになります。
Z世代・ミレニアル世代(20代〜30代前半)の特徴
この世代は、生まれた時からインターネットがある「デジタルネイティブ」です。効率性を重視し、無駄な会議や慣習を嫌う傾向があります。ワークライフバランスを大切にし、「なぜその仕事をするのか」という意味を求める傾向も強いです。SNSを通じて多様な価値観に触れているため、フラットなコミュニケーションを好みます。
氷河期世代(30代後半〜40代)の特徴
就職活動が非常に厳しい時代を経験したこの世代は、個人の成果や専門性を重視する傾向があります。「自分の身は自分で守る」という意識が強く、スキルアップへの関心も高いです。経済的な不安定さを経験しているため、安定志向の方が多い傾向があります。
バブル世代・ベテラン層(50代〜60代)の特徴
終身雇用制度の中で働いてきたこの世代は、会社への帰属意識が強く、チームワークを大切にします。対面でのコミュニケーションを好み、経験や過程を重視する傾向があります。長期的な視点で物事を考え、若手の育成にも熱心です。



大切なのは「違いは優劣ではない」ということです!
これらの違いは、どちらが良い・悪いという問題ではありません。
それぞれが育った時代の社会情勢や価値観が反映されているだけです。この理解が、多世代共生の第一歩になります。
【コミュニケーション編】風通しの良い職場をつくる5つのコツ
(1) 「雑談」の機会を意図的に設ける
世代間の理解を深めるのに効果的な方法の一つとして「雑談」があります。フリーアドレス制を導入したり、社内にカフェスペースを設けたり、月に1回「テーマ別ランチ会」を開催するなど、自然に会話が生まれる環境をつくってみましょう。
(2) 相互理解を深める場を設ける
それぞれの世代の価値観や考え方を共有するワークショップを開いたり、社内報で様々な世代の社員を紹介したりして、お互いを知る機会を増やしましょう。「そんな風に考えていたんだ」という発見が、理解の扉を開きます。
(3) コミュニケーションツールを最適化する
チャットツールを好む若手と、対面での相談を好むベテラン。どちらも大切なコミュニケーション方法です。「緊急時は電話、情報共有はチャット、相談事は対面で」といったように、場面に応じた使い分けのルールを作ると良いでしょう。
(4) 「感謝」と「称賛」を伝える文化をつくる
サンクスカード(感謝の気持ちを伝えるメッセージカード)制度やピアボーナス(同僚同士で成果を評価し合う仕組み)を導入する企業も増えています。世代を超えてお互いの良いところを認め合える文化をつくりましょう。感謝の気持ちが伝わると、自然と心の距離も縮まります。
(5) 互いを尊重する対話のコツを学ぶ
相手を尊重しつつ、自分の意見も伝える技術(アサーティブコミュニケーション)の研修を実施するのもおすすめです。世代に関係なく、建設的な対話ができるようになります。
【マネジメント編】各世代の力を引き出す管理職の役割
(1) 1on1ミーティング
全ての部下と定期的に1対1で話す時間を持ちましょう。世代によって、仕事に対する考え方やキャリアの描き方は様々です。一人ひとりの価値観を理解することで、その人に合った指導やサポートができるようになります。
(2) 期待役割の明確化
年齢に関係なく、一人ひとりに「会社はあなたにこんな役割を期待している」ということを具体的に伝えましょう。そして、その貢献をきちんと評価することが大切です。誰もが「自分は必要とされている」と感じられる環境をつくりましょう。
(3) 無意識の偏見を自覚する
「若い人はやる気がない」「ベテランは新しいことを覚えられない」といった決めつけは、実は根拠のない思い込みかもしれません。一人ひとりを個人として見て、先入観を持たずに接することを心がけましょう。
(4) 公平な評価制度の構築
経験年数だけでなく、成果や貢献度、新しいことへのチャレンジなど、多角的な視点で評価する仕組みをつくりましょう。どの世代にとっても納得感のある評価制度が、モチベーション向上につながります。
【制度・仕組み編】多世代共生を組織的に促進する3つの仕掛け


(1) メンター制度/リバースメンター制度
従来のメンター制度(ベテランが若手を指導)に加えて、リバースメンター制度(若手がベテランに新しい技術やツールを教える)を導入してみましょう。お互いが先生であり生徒でもある関係は、対等な関係性を築くのに効果的です。
(2) 柔軟な勤務制度の導入
時短勤務、リモートワーク、フレックスタイムなど、各世代のライフステージに合わせた働き方を選択できるようにしましょう。子育て中の人、介護をしている人、勉強したい人など、様々なニーズに応えることで、全ての世代が働きやすくなります。
(3) 多世代混合のプロジェクトチーム編成
新しいプロジェクトを立ち上げる時は、意図的に様々な年齢層の社員をミックスしてチームを組んでみましょう。最初はぎこちなくても、共通の目標に向かって協力するうちに、自然と理解が深まっていきます。
(注意点)陥りがちな失敗と、それを避けるためのポイント
多世代共生の取り組みでよくある失敗例と、その対策をご紹介します。
- 特定の世代に偏った取り組み
「若手のため」「シニアのため」という取り組みは、他の世代から「私たちは後回し?」と思われがちです。従業員たちがその取り組みにどういう印象をもつかを実行する前イメージしましょう。 - コミュニケーションを飲み会に頼る
飲み会が苦手な人、お酒を飲めない人もいます。多様な交流の場を用意することが大切です。 - 制度が名ばかりになる
制度を作っただけで満足せず、定期的に効果を検証し、改善していくことが重要です。 - 経営層や管理職の理解不足
トップが本気で取り組まなければ、現場の意識は変わりません。まずは経営層から意識改革を始めましょう。
多世代共生は「組織の未来への投資」。継続的な取り組みで、強いチームを育てる



多世代共生な職場づくりは、一朝一夕には実現しません。
「あの人はそういう考え方をするんだな」という理解から始まって、「一緒に働けて良かった」と思えるような関係性を少しずつ築いていく。そんな職場こそが、社員一人ひとりの力を最大限に引き出し、会社の持続的な成長を支える基盤となります。
世代間のギャップを「問題」として捉えるのではなく、「可能性」として活かしていく。そんな発想の転換が、あなたの会社を一段と強くしてくれるはずです。
まずは今日から、隣にいる違う世代の同僚に少しだけ気持ちを込めて「おつかれさまです」と一言話しかけてみませんか?
小さな行動の積み重ねが、やがて大きな変化をもたらすことでしょう。